外貌に醜状を残すものという後遺障害は，他の後遺障害と異なり，逸失利益について少し特殊なところがあります。
　後遺障害逸失利益は，本来できたはずの仕事ができず，その分もらえたはずのお金がもらえなかった損害です。そのため，もしも，事故前と変わりなく，仕事をして，事故前と同じように収入がある場合に，逸失利益という損害はないと評価されることが多いのです。

　外貌に醜状を残した場合はどうでしょうか？仕事に支障が出るでしょうか？
　例えば，主婦（主夫）やデスクワークが中心の職業，事務職，肉体労働系の職業の方は，特殊な場合を除き，顔に傷が残ったとしても，実際には仕事をするうえで，一般には影響はないと考えられることが多いのです。そうすると，外貌醜状は，仕事に対して影響は少ないため，実際には，収入に影響がないと考えられます。そうすると，逸失利益が認められないことが多いという結論になることが多いです。

　もちろん、モデルや俳優など、顔を売りにしている職業については、逸失利益が認められる場合があります。

　一方で，外貌に醜状を残した場合には，逸失利益ではなく，慰謝料で考慮する，という取り扱いも有力です。
　顔の傷は，一見して明らかな後遺障害であり，精神的な苦痛の程度が高いと評価されます。

　また、仕事で全く人に会わないということは、なかなかなく、職場でのコミュニケーションや営業など、外貌醜状が全く影響がないと言い切れることはできません。

　ですので，逸失利益が認められないという一方で，慰謝料を増額するという判断がなされることがあります。

　一種の調整として、慰謝料を用いるのです。